バックパックの底に、シドニーの冬を閉じ込める

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2003年の冬、シドニーのセントラル駅は、これから旅に出る者たちの期待と、どこか重苦しい静寂が混ざり合っていた。私は長距離バスのプラットフォームに立ち、足元にある大きなバックパックを見つめていた。私にとって、それは単なる荷物ではなく、生活のすべてを詰め込んだ塊だった。

これから向かうのは大陸の北、熱帯のケアンズだ。しかし、手元には真冬のブルーマウンテンを越えるために用意した厚手のフリースや、友人たちが寄せ書きをしてくれた重いデニム、何冊かの分厚い教科書があった。シドニーでの数ヶ月間に少しずつ増えていった「生活の欠片」たちが、バックパックのジッパーを無慈悲に押し広げている。

バスの荷物預け入れには厳しい制限があったし、何より、これから始まる終わりの見えない移動を考えると、この歪なほどに膨らんだ荷物を背負い続けるのは現実的ではなかった。パッキングをやり直すたびに、どこか一箇所が閉まれば別の場所が弾け、バックパックはまるで息苦しそうに膨張していた。

どうしても捨てられないものばかりだった。ならば、物理的な体積を削るしかなかった。私は、数日前に掲示板の情報で見つけて手に入れていた、衣類を小さくまとめるための透明な袋を広げた。

その袋に、一番かさばるニットや予備のタオルを放り込む。ジッパーを閉じ、膝をついてゆっくりと自分の体重を乗せていく。シューッという微かな音とともに、布地の隙間に残っていたシドニーの冬の空気が抜けていった。

数分前までバックパックの半分を占領していた冬服たちが、驚くほど硬く、薄い板のような塊に変わっていく。それらをバックパックの底へ滑り込ませると、先ほどまでの苦闘が嘘のように、ジッパーは滑らかに閉まった。全体がコンパクトに締まったおかげで、背負った時の重心が安定し、一歩踏み出した時の揺れも格段に抑えられた。

特別な仕掛けがあるわけではない。ただ、空気を抜いて丸めるという単純な作業が、長距離バスの狭い座席の下や、ドミトリーの小さなロッカーに荷物を収める際の、精神的な余裕に繋がった。

あの時、これを使わずに無理やり荷物を詰め込んでいたら、移動のたびに何かを捨て、旅の途中で後悔していたかもしれない。薄くなった冬服の感触を確認しながら、私はようやく、北へ向かうバスのステップに足をかけた。

旅の舞台裏

ラウンドを続けていると、経験値と共にだんだん荷物はそぎ落とされていきます。ただ初期は何がどれだけ必要かの判断が難しいので、今目の前にある荷物を極力小さくして持っていくことになりがちです。特に必要だけれどすぐには使わないかさばるものは圧縮袋で小さくすると良いです。

ただスーツケースの場合はあまり重さを気にしなくてもいいのですが、背中に背負うとなるとその重さも重要になってきます。各アイテムもお金をかければ軽量化はできますが、貧乏旅にはなかなか難しいのが実情です。
また、都度圧縮作業をしていると時間がかかるので、普段よく使うものは圧縮袋に入れない方が良いと思います。都市を転々とする旅の場合にはめんどくさくなってきてしまいますので。

人によって旅のスタイルは違いますし、必要なものも、量も異なるので、圧縮袋はあった方が便利ですが、不要と感じたら処分できる程度の安物で良いのではないでしょうか。

極論私は最終的には使わなくなりました。
冬にラウンドを開始して、夏には出国して東南アジアへ流れる予定に決めたこともあり、冬用の服は処分してしまったので。

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