この記事の前半は、2003年の実体験をベースにした「ショートストーリー」です。
後半の「旅の舞台裏」に、防寒ジャケットの考え方(選び方・運用・パッキング)をまとめます。
※この記事にはプロモーション(アフィリエイトリンク)が含まれます。合う/合わないも含めて正直に書きます。
結論(忙しい人向け)
防寒用の厚手ジャケットは、寒い場所へ行く予定がある人ほど必要度が上がります。ただしバックパック旅では、暖かさと同じくらいかさばりも問題になります。迷ったときは、①風を防げるか、②コンパクトに圧縮できるか、③他の季節にも使い回せるか、の3点で選ぶと失敗しにくいです。
ショートストーリー|透明な板に変わる、季節の記憶
シドニーの冬は、想像よりもずっと静かに、そして鋭く冷える。日中の柔らかな陽光に騙されて軽装で街へ出ると、陽が落ちた瞬間に後悔が襲ってきた。空気がひとつ密度を変えて肌に刺さる。薄手の上着では到底抗えない冷気が、異国にいる孤独をいっそう色濃くした。
だから私は、備えとして厚手の衣類を揃えた。けれど、暖かさと引き換えに、バックパックは悲鳴を上げることになった。
移動の朝。荷造りは、いつも手間がかかった。無理に閉めようとすればどこかが跳ね、反対を押さえれば別の場所が盛り上がる。原因は明白だった。フリースや、かさばるニット。それらがバックパックの半分を無邪気に占領していた。
私は、透明なビニール袋にそれらを放り込む。ジッパーを閉じ、袋の上に膝をついて全体重を預ける。「シューッ」という音とともに空気が抜け、あれほど主張していた冬服たちが嘘のように平らになり、硬い板のような塊へと変わっていく。
その塊をバックパックの底に滑り込ませる。滑らかに動くファスナー。たったそれだけのことなのに、荷造りが完成した朝は、この先の旅すべてがうまくいくような万能感に包まれた。
厚手のジャケットは、着ているときは心強い相棒だ。けれど、一歩移動を始めれば、途端に重たくて不自由な荷物へと姿を変える。旅の寒さは体だけでなく、荷物の形、心の持ちようまで変えてしまうのだと、膝の下で潰れていく服を眺めながら思っていた。
旅の舞台裏|写真の中の、いつも同じ一着
今の時代なら、冬の旅もずいぶんスマートになったはずです。ユニクロのウルトラライトダウンのように、驚くほど軽くて、手のひらサイズに収まる防寒着がどこでも安価に手に入りますから。
しかし、2003年当時はそうはいきませんでした。 当時の「暖かい服」というのは、例外なく「分厚くて重い服」のことでした。日本から持っていくにしても、バックパックの限られたスペースを考えると、あまりに現実的ではありません。
そのため、私は現地の冬の到来に合わせて、厚手の衣服をシドニーで調達することにしました。それまでは、手持ちの薄い服を何枚も「重ね着」することで、なんとか寒さをしのいでいたのです。
けれど、いざ本格的な冬服を手に入れると、今度は移動のたびに「かさばる荷物」という現実に直面することになります。なので、冬の間は主に着用し、季節が変わる頃には最低限のものを残して、断捨離していました。
今写真を見返してみても、いつも同じ服を着ていて、おしゃれさは全然ないなと思います。ただその一着に対する思い入れは強く、手に入れた光景からどんな時に来ていたななど、いくつものエピソードが共に蘇るのは何とも感慨深いものです。
選び方|防寒用の厚手ジャケットで失敗しない3点
1. 「風」を遮断できるか
防寒において、実は“厚さ”以上に重要なのが耐風性です。どれほど内側が暖かくても、冷たい風が通り抜けてしまえば体温は一気に奪われます。特に海沿いの街や朝晩の移動が多いワーホリ生活では、表面が風をしっかり止めてくれる素材かどうかで、体感温度の質が劇的に変わります。
2. 「かさばり」への対策ができるか
バックパック旅において、厚手のジャケットは「着ている時間」と同じくらい、あるいはそれ以上に「運んでいる時間」が長くなります。 本記事の描写にある通り、いざという時に圧縮袋で“薄い塊”にできるかどうかは死活問題です。空気を抜きやすい中綿素材や、復元力の高いダウンなど、「潰せる=持てる」という運搬性の高さが、移動のストレスを左右する最重要ポイントになります。
3. 「出番」の多さをイメージできるか
「極寒の時だけ」という限定的な1枚は、旅の期間のほとんどをバックパックの底で眠ったまま過ごすことになり、実質的にただの「重荷」に変わってしまいます。
荷物全体のバランスを締め、身軽さを保つためには、一つの用途に縛られず、以下のような複数のシーンで転用できるかどうかが重要です。
- 街歩きでの汎用性: 山登り用のような本格的すぎるデザインではなく、街中でも違和感なく着られるか。
- レインウェアとしての機能: 多少の雨なら弾く撥水性があるか。
- 寝具としての活用: 暖房の効かない宿や、飛行機・夜行バスの機内で、毛布代わり(寝具)として使えるか。
このように「何役もこなせる1着」を選ぶことが、パッキングの成功に直結します。
おすすめ
合う人:寒い地域に行く予定がある/朝晩の移動が多い/冷えに弱い
合わない人:基本ずっと暖かいエリアにいる/荷物体積が限界/現地で調達できる環境がある
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よくある質問(FAQ)
Q. 厚手ジャケットは日本から持って行くべき?現地購入でもいい?
A. 「必要になる時期」と「行く地域」次第です。早い段階で寒い場所へ移動するなら持参が安心。ただ、かさばるのが難点なので、「必要になってから買う」という判断も十分合理的です(特に都市部の滞在が長い場合)。
Q. かさばり対策で一番効くのは?
A. 当面使わない厚手の衣類を圧縮して体積を減らす方法は、バックパックが閉まらなくなったときに効果があります。
Q. 厚手=最強?薄手は不安。
A. 厚手は暖かいですが、脱いだあとに荷物になります。風を防ぐ・重ね着で調整するなど、「寒さの種類」に合わせた選び方をした方が、結果的に快適になることもあります。
Q. 洗えない・乾かない問題はどうする?
A. ジャケット自体より、「中に着るものが回っているか」を優先すると管理しやすくなります。衣類は「タフさ・乾きやすさ・ローテーション枚数」で考えると整理しやすいです。
さいごに
厚手のジャケットは、寒さの中では味方だけど、荷物の中では主張が強いです。
バックパックの底で膨らむ“冬”をどう扱うかは、旅の体力だけじゃなく、旅のリズムまで決めてしまう気がします。
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