差し込んだ瞬間、ランプがともった

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2003年、バックパックに詰める荷物を一つずつ選んでいた。旅の相棒といえば、デジカメと電子辞書くらいのものだった。スマートフォンなどまだ影も形もない時代で、デジカメの予備バッテリーをどう確保するかは、出発前から気になっていた点のひとつだった。

オーストラリアのコンセントはハの字型の「タイプO」。日本とは形が違うことは渡航前から調べて知っていたので、変換プラグはあらかじめ用意していた。ただ、実際にシドニーのホームステイ先で壁のコンセントを目にしたとき、「本当にハの字だ」と思わず確認してしまったのを覚えている。知識として知っていることと、目の前で見ることは、やはり少し違う。

変換プラグといっても、電圧を変える変圧器ではなく、プラグの形を変えるだけのシンプルなものだ。手のひらに収まる小さなパーツで、日本のプラグの先にカチッとはめるだけ。それをコンセントに差し込み、デジカメの充電器と髭剃りをつなぐと、小さなランプがともる。それだけのことだが、異国の地で初めてそのランプを見たとき、思いのほかほっとした。ちゃんとつながった、という感覚だったと思う。

日本から持ってきた携帯電話は、オーストラリアでは使えなかった。当時は周波数帯の違いがあり、現地のSIMを入れれば使えるというものでもなかった。だから充電が必要だったのはデジカメと髭剃りくらいで、変換プラグの出番はそれほど多くはなかった。それでも移動のたびにバッグの中に入れていたのは、いざというときに手元にない不安を避けたかったからだと思う。

バンダーバーグの安宿でも、西オーストラリアのキャラバンパークでも、荷物を広げるとまず取り出すものは大体決まっていた。かさばるものではないが、これがなければデジカメは使えなくなっていた。旅の記録を残すための、地味だけれど欠かせない道具だった。

旅が終わってずいぶん経つが、あの小さなプラグは今も使っている。引き出しから取り出すたびに、シドニーのホームステイ先で初めてランプがともった瞬間をふと思い出す。20年以上前の道具が今も現役というのは少し驚きだが、それだけシンプルな作りだということなのだろう。形を変えるだけ、それで十分だった。

旅の舞台裏

初めての海外だったこともあり、変圧器と変換プラグの準備にはずいぶん気を使いました。日本を出る前、プラグを何度も付けたり外したりしながら、「本当にこの形で合っているのか」「つないだときにショートしないか」と、ひとりドキドキしていたものです。

現地に着いてからも、ひとつ困ったことがありました。オーストラリアのコンセントはハの字型だと調べていたのに、実際のコンセントを見ると穴が3つある。持ってきた変換プラグで本当に使えるのか、一瞬焦りました。

結果的には3つ穴のうち上の2つにハの字を差せばよいだけで、下の1つはアース用でした。現地の家電にはアース付きの3ピンプラグのものもあるため、どちらにも対応できる作りになっているのだそうです。地球の歩き方に「両方使える」とは書いてあったものの、実際に目にするまでは少し不安でした。

今では1つでどこの国でも使える万能アダプタや、USB端子が複数ついたものなど、便利なアイテムが増えているようです。それでも私はいまだに当時の変換プラグを、訪れる国に合わせて持って行くようにしています。シンプルで軽く、20数年経っても壊れないのだから、替える理由がないんですよね。

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