境界線を引く、夜のドミトリーにて

トラベルギア

2003年の秋、パースの街外れにあるバックパッカーズ・ホステルに滞在していた。そこは古い建物を改造した宿で、私が割り当てられたのは12人部屋のドミトリーだった。二段ベッドが規則正しく並び、湿った空気と誰かの靴下の匂いが混ざり合っている。安宿特有の、雑多でいながらどこか落ち着かない空気が常に漂っていた。

夜が更けると、ドミトリーは静寂に包まれるはずだった。しかし、実際は違った。隣のベッドで眠る大柄な男の地響きのようないびき、深夜にチェックインしてきた宿泊客が荷物のジッパーを開け閉めする音、そして廊下の向こうから聞こえてくる若者たちの笑い声。壁一枚隔てた向こう側の気配が、容赦なく私の意識を逆なでする。眠りたいのに、神経が音を拾い上げ、脳が覚醒してしまう。

明日の朝には長距離移動が控えている。ここで眠り損ねることは、翌日の体力を削り取ることを意味していた。私は枕元に置いていた小さなプラスチックのケースを探り、中から柔らかな素材の耳栓を取り出した。

指先で細長く丸め、耳の奥へと差し込む。数秒待つと、素材がゆっくりと膨らみ、私の耳の穴の形に馴染んでいくのがわかった。それまで部屋を支配していた不快な音の輪郭が、霧に包まれたようにぼやけていく。

完全な無音になるわけではない。ただ、鋭利だったいびきの音も、神経に触るようなジッパーの金属音も、遠い海の底で聞いているような、くぐもった響きへと変わった。自分の呼吸音だけが内側から聞こえてくる。その一定のリズムが、高ぶっていた神経を少しずつ鎮めてくれた。

音を遮断するということは、自分だけの境界線を引くことによく似ていた。他人の生活音が入り混じる12人部屋の中で、その小さな塊を耳に入れている間だけは、私の周囲にわずかな静寂が確保された。

翌朝、目覚めたとき、周囲の宿泊客はすでに何人か入れ替わっていたようだが、私は深い眠りのおかげで体が軽かった。もしあれを持っていなかったら、私は音の渦の中で一晩中天井を見つめ、ひどく疲弊した状態で旅を続けていたに違いない。使い古したそれを再びケースに収め、私は次の街へ向かう準備を始めた。

旅の舞台裏

耳栓は、デリケートな人にとって必須アイテムとも言えます。

特にドミトリーに宿泊する場合は、生活サイクルの違う多国籍な人たちと部屋を共にするので、まず自分の生活スタイルには適合しないと思っておいた方が良いです。
一人旅同士が集まった部屋になればいいのですが、運が悪いと普通に夜中でもおしゃべりしている友人同士がいたりとかします。

また、部屋の中だけではなく、窓際だったりすると、外の音が不通に入ってくることもあります。街中に宿泊した時に、夜中に酔っ払いが突然叫んだりした時にはさすがに何事かと飛び起きました。
あと遠くで大声での会話の応酬があった後、銃声が聞こえたりしたこともありました。
これは特殊なケースだと思うので、まず発生することはないと思いますが。

どういう環境で寝ることになるかもわからないし、飛行機でも使えるので、私は無くなっても惜しくない、100均のような場所で買えるものを、予備も含めて2セットくらい持っていたと思います。無くしたり、汚れたりするので、イヤホンでも代用はできますが、使い捨て感覚の耳栓はあっても良いのかなと思います。

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